APECは昨年の首脳会議で今年中に中長期的な成長戦略を作る方針を決定。11年に実行に着手し、5年後の15年には首脳らに成長戦略の成果をまとめた中間報告を行うことにしている。
成長戦略は、貿易不均衡の是正など「均衡ある成長」▽女性の雇用機会拡大など成長基盤を強化する「あまねく広がる成長」▽再生可能エネルギーの導入促進を含む「持続可能な成長」−−など五つのテーマで構成。今回の大分でのハイレベル会合では、この五つのテーマについて肉付けするとともに、成果を点検する仕組みも協議する。
初日の7日の会合は、持続的な成長に不可欠な構造改革が主要議題となり、社会保障制度の充実や規制緩和を通じて、経済成長と格差是正を一体で進めることが重要との認識を共有した。社会保障制度の充実を図るのは、アジアの加盟国・地域で高水準にある貯蓄を投資や消費に振り向け、成長促進を図るのが狙いだ。また、環境と成長の両立策では、環境関連産業の育成を進める方針で一致した。初日の会合終了後、直嶋経産相は「域内経済の質の高い成長を目指し、構造改革などで協力する方向性を確認できた」と強調した。
最終日の8日は域内の貿易・投資の活発化に向けた知的財産の保護や工業製品の輸出入などにかかわる基準・認証の統一を討議。また、中小企業の支援や女性の雇用機会拡大の具体策を探る。
APECが初めて中長期の成長戦略作りに乗り出した背景には、リーマン・ショック以降、日米欧など先進国の成長力低下が鮮明となったことがある。世界経済の新たなけん引役となったアジアの持続的な成長を図らなければ、世界経済の低迷は逃れられない。このため、APECとして明確な成長戦略を掲げ、一段の政策協調に踏み出すことにした。
国際通貨基金(IMF)によると、10年の成長率見通しは中国の10.5%を筆頭にアジア新興国は軒並み5%以上で、先進各国を大きく上回る。20年にはアジア全体の個人消費が日本の約4.5倍と、世界一の米国に匹敵する規模となるとも予想され、日米などはアジアの成長力をいかに取り込むかが大きな課題となっている。
また、世界経済の持続的な成長には、中国、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)が輸出に過度に依存する体質を変え、内需とバランスの取れた成長構造に転換することも不可欠だ。議長国の日本は11月の首脳会議でまとめる成長戦略と行動計画の素案をテコに、アジア諸国に成長構造の転換を促したい考えだ。
ただ、アジアの加盟各国は規制緩和や構造改革を義務付けられかねない成長戦略の進ちょく状況の点検の仕組み作りには慎重。実効性のある成長戦略の策定に向けて、各国の協調姿勢をどこまで引き出せるか、議長国・日本の手腕が問われている。
引用元:Yahoo!JAPANニュース